いつも、一人で決めるのだ
わたしは、驚いた。
みんな、誰かに聞いて買い物をするんだ、ということに。
自分の意思だけでは買えなくて大変、と思ったと同時に、誰かが買い物を止めてくれたり同意してくれたりすることに対して羨ましくも感じた。
わたしには、いない。
いつも、一人で決めるのだ。
特にお金の使い方なんて、どれだけ近い友人だって、口出しはしてこないし、そもそもわたしの財布事情など、知るよしもない。
一人で決めるということに、たまに薄ら寂しい気持ちになる。
一年に一度、税理士さんは、わたしのお財布事情についてアドバイスをくれる。もう少ししっかりしてくださいよ、という注意だが、わたしは嬉しいのだ。
今年も税理士さんから電話がかかってきた。
「青木さん」
「はい、ごめんなさい」
内容も聞かずに条件反射でわたしは謝る。
「何がですか?」
「何って、先生から連絡いただくって、いいお知らせだったことは、ないような…」
「そんなことはないですよ」
「あ、本当ですか、じゃあ、今日は?」
「注意です」
「ほら、やっぱり!ありがとうございます、いつも」