校長が全保護者宛に送ったメールにも

息子の中学校の校長まで、全保護者宛に送ったメールの中でこの言葉を連呼していた。「日曜の午後8時に始まる決勝戦を生徒たちに観てほしいので、月曜の始業時間を1時間遅らせ、9時半の2時限目からにする」という内容のメールだった。彼はこう書いていた。

「『カミング・ホーム』が現実になった場合、試合後にトロフィー授与などもあり、生徒たちがその歴史的瞬間を見られない状況は避けたい」「1966年以来、打ち砕かれ続けてきたわれわれの夢が叶えば、決して諦めるなという生徒たちへのメッセージになる」「私も眠れない週末を過ごすでしょう。イッツ・カミング・ホーム!」。

完全に舞い上がっている。

まあ、ここまでの大騒ぎになってしまうのは、「滅多に(半世紀に一度ぐらいしか)優勝しない国」だからには違いないが。

ここからは決勝戦の翌朝に書いている。昨夜、イングランド代表はイタリア代表に負けた。しかも、これは作り話でもないし、ジョークでもないのだが、本当に延長戦の果てにPK戦で負けるという、いつものイングランドの敗戦スタイルを見事に踏襲した。

「もはや呪い」とがっくり肩を落とし、2時限目から息子は登校した。馴染みの郵便配達のお兄ちゃんも、いつになく無口で顔つきがめっぽう険しかった。

たぶんこれからしばらくは、「カミング・ホーム」は迂闊に人前で使えない言葉になるだろう。