「音楽」が「音苦」に
「老後とは思っていない」と言ったものの、毎日自分の身体とつきあっているので、徐々に歳を取り、衰えていくことは実感しています。ですから役者を続けたいなら、それなりに努力も必要。パーソナルトレーナーについてトレーニングもしています。
さすがにこの歳になると、トレーニングがつらいなと感じることも。でも、「今日はなんだか、めんどくさいわ」などと愚痴ろうものなら、トレーナーに怒鳴られる。「少しでもやらないと! 足の先が痛いのは、さぼっている証拠」と(笑)。けっこう厳しいんです。でも、怒鳴ってくれる人がいるというのは、幸せなことね。咤激励されることがなくなったら、おしまいですよ。
髪はグレイヘアにしてからもう20年ほど。2002年、どうしてもやりたかったアメリカの戯曲を日本で上演できることになって。願ってもないチャンスです。演出家が「坊主頭になってもらえますか?」と言うので、躊躇なく、全部剃ってしまいました。
そうしたら次に生えてきた髪の毛が真っ白! 困ったなと思っていたら、「素敵だからそのままにしては」と言ってくれる人がけっこういて、それ以来グレイヘアです。
実は、耳がよく聞こえなくなり、補聴器を使うようになったこの数年、歌うことを避けるようになっていました。機械を通したような音に違和感があって、音程が不安定になってしまうのが、なんともやりきれなかったから。
若い頃は、歌唱力を評価していただくことも多かったのにね。20代で司会をつとめたテレビ番組『光子の窓』では、窓から覗いてテーマ曲を歌うオープニングが注目されました。オペラ曲もよく歌っていましたし、ミュージカルにもたくさん出ています。でもその頃の自分と比べてしまい、つらい気持ちになってしまう。それで最近は、「音楽」が「音苦」になっていました。