健康寿命の要は、自分の足で歩くこと。ところが50歳を過ぎるころから足の老化が始まり、さまざまな不具合が生じるのだとか。足の健康を守るには、どんな症状や変化に注目すればよいか、足病(そくびょう)医学の専門医・久道勝也医師が解説します(構成=浦上泰栄 イラスト=本田佳世)

加齢によって状態が大きく変化する

人生100年といわれる長寿の時代を迎え、「最後まで自分の足で歩きたい」「ぎりぎりまで自立した生活を続けたい」と望みながら、歩行が困難になったり、寝たきりの日々を送らざるをえなくなったりする人が年々増えています。

加齢とともにさまざまな体の機能が衰えますが、なかでも生活の質の低下に直結するのが、自分の足で歩けなくなること。歩けないと自力での排泄が難しくなり、やがて自分で食べることもできなくなって、人生の終焉を迎えます。

つまり、最後まで充実した人生を送るために必要なのは、足の健康をできるだけ長く維持する=《足寿命》をのばすこと。そして、100歳までスタスタと歩けるような、元気な足をつくることなのです。

ところが、大勢の患者さんの足を診察するうちに、私は「人間の足は50年ほど使うとガタがくる」という実感を持つようになりました。特にケアをしなくても健康的な足で元気に歩けるのは50歳くらいまで。その後はさまざまな不具合が足に生じるようになり、メンテナンスや治療が必要になる、ということです。

もともと、足は体の中でももっとも酷使されている部位。重い体重を支えながら、1日に数千回、床や道路にたたきつけられ、ときには硬い靴・サイズが合わない靴の中で長時間の負荷を強いられることも。

さらに加齢により筋肉が衰えて筋力が落ちる、衝撃を吸収するクッションの役割を果たしてくれる足裏の脂肪が減る、骨や関節にゆがみや変形が起こる、血液やリンパの流れが低下する……などの症状が表れます。このように、足の状態は加齢とともに年々大きく変化していくのです。