苦情を言わざるを得ない時なら
相手に苦情を言う時の話し方には、難しいものがあります。言い方が悪ければ、人間関係が傷ついたり、壊れたりしてしまうこともあります。
「ものも言いようで角(かど)が立つ」ということわざがあります。「角が立つ」とは、「人間関係がギクシャクする」ということです。
同じことを伝えるにしても、言い方次第で人間関係がギクシャクする原因になるから、注意する必要がある、という意味です。
特に、相手が職場の同僚であったり、友人や近所の人であったりすれば、人間関係を断ち切ってしまうわけにはいきません。これからも円満につきあっていかなければならないのですから、人間関係に角が立たないように工夫したほうがいいでしょう。
たとえば、近所に、苦情を言わざるを得ないような問題のある家があったとします。その家に苦情を言う際、少しでも言い方をやわらげようと、こんなふうに切り出す人がいます。
「はっきり申しあげまして」
「言いたくはないんですが」
しかし、この「はっきり言って」「言いたくはない」という前置きには、言い方をやわらげるというよりも、むしろ、一方的に相手を悪者にする印象があります。ですから、相手は、たとえ自分に非があることがわかっていても、腹立たしい気持ちになるのではないでしょうか。
むしろ、よけいな前置きはせずに、
「お願いしたいことがあるんですが」
と、おだやかな口調で、言いたいことを伝えるほうがいいと思います。そのほうが、相手も冷静にこちらの言葉を受けとれるでしょう。
※本稿は、『人間関係で「疲れない心」に代わる言いかえのコツ』(講談社)の一部を再編集したものです。
『人間関係で「疲れない心」に変わる言いかえのコツ』(著:植西聰/講談社)
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