夫の生きた軌跡と魅力を知ってほしくて

110日に及んだ入院生活は、たしかにつらいことの連続でした。でも夫は明るく冗談を飛ばすのです。私も病室を高級ホテルだと言って突撃レポートのように動画を撮ったり、抗がん剤治療で痩せた夫を「モデルみたい」と褒めたり。本を書くうえでも重い場面が続いたら、軽い場面を息抜きのように入れるなど、読む人の心の動きを考えながら構成していきました。

周りからは「仲良し夫婦」と言われましたし、実際そうだったと思いますが、36年半の結婚生活では、離婚を真剣に考えた時もありましたよ。夫のバッグから浮気相手との写真を見つけた時の怒りも、包み隠さず書いています。せっかく書くのだから、嘘やごまかしはナシにしよう!

と。同時に、夫の生きた軌跡と魅力を知ってほしくてエピソードを盛り込みました。読んだ方に「こんな素敵な人に会ってみたかった」と思ってもらえると嬉しいですね。

タイトルは、私たち夫婦の習慣から。入院生活が始まったころに、「7秒のハグは絆が強くなる」と知った夫が1日に1回しよう、と。私たちにとって大切な行為なので迷わず選びました。

今もふと涙する時がありますが、いつか夫と会えるまで、一人の時間を慈しんで生きていければ、と思います。

【関連記事】
山村美智「食道がんの宣告から、わずか1年半で夫を見送って…父親みたいな彼はもういない」
俳優・塩見三省「脳出血で人生を中断されて。元に戻るのは不可能とわかったとき、声をあげて泣いた」
大空眞弓「9度のがんも乗り越えて。81歳で住み慣れた東京を離れ、石垣島に移住するまで」