元フジテレビアナウンサーで、退社後は女優として活躍している山村美智さんが、食道がんで闘病されていたご主人を見送ってから1年半。「婦人公論」でその経験を話したことをきっかけに著書を執筆、刊行することになりました。執筆にあたって心掛けたのは「ただの闘病記にはしない」ことだったそうでーー。(構成=本誌編集部 撮影=藤澤靖子)
苦しいことばかり書いてあるものを読みたいかなと
食道がんで闘病していたテレビマンの夫・宅間秋史を見送ってから、1年半が経ちました。悲しみの海の底に沈む時期が長く続きましたが、今は海面に浮上して息ができる状態に。この変化は夫との日々を綴った本を書いたことが大きかったと思います。
2021年2月に『婦人公論』で私たち夫婦のことをお話ししました。その記事を見た友人たちから、「文章にしてはどうか」と提案されたのがこの本、『7秒間のハグ』を書くきっかけでした。その後、出版社の方とご縁ができて執筆を始めましたが、舞台の脚本を書いた経験はあったものの、エッセイとなるとまったく別物。私にできるだろうか、と不安に思っていたのです。
看病中につけていた日記を読み返しながら書いていったのですが、途中、つらくて大泣きしたり、すべてを投げ出したくなったりもして……。でも、書きかけの原稿を読んだ人たちから、「すごくいいよ」「面白かった」と励ましてもらい、1ヵ月半で書き上げました。
心がけたのは、ただの闘病記にしないこと。がんという病と闘っている人や家族が手に取ることもあるかもしれない。でも、苦しいことばかり書いてあるものを誰が読みたいだろうか?と疑問に思って。