「今宵の月のように」で鍛えられた
こういう話をしていると、「今宵の月のように」(ドラマ『月の輝く夜だから』主題歌)を作った時のことを思い出します。1990年代でしたが、主題歌が当たればドラマもヒットするという方程式が成立していた時代だっただけに、何回もダメ出しされて。だから「くだらねえとつぶやいて……」という歌い出しのフレーズができて、制作サイドからOKが出た時は嬉しかった。
思えば私はあれで鍛えられたというか……。苦い経験も、過去に作ってきた歌も、これまでに積み重ねてきたことがすべて生かされているというのは嬉しい。今回のアルバムは私の集大成と言えるのではないでしょうか。
カバーソングとして「春なのに」も収めました。すっかり忘れていたんだけど、『ROMANCE』のためにレコーディングしたすべてのカバー曲をカーステレオで聴き直していて発掘したんです。
卒業式、片想いの相手に制服のボタンをくださいと伝える女生徒の心情を歌っています。作詞作曲した中島みゆきさんの描写力にあらためて度肝を抜かれ、甘酸っぱい感情がグッと込み上げてきました。私は中学の卒業式の前日、眠れないほどナーバスになっちゃったんです。誰からもボタンくださいって言われなかったらどーしよう、って。(笑)
ノスタルジーに浸れる楽曲の力を感じながら、現実の自分はといえば、過去を振り返っている場合じゃない。私にはまだまだやりたいことがあるのです。
鍛え抜かれ、洗練された世界観に憧れますし、自分に必要なことだと思っています。これは想像ですが、たとえばマドンナは、ソロのアーティストとして素晴らしいショーを提供するために凄まじく心身を鍛えているはずです。バンドというのは仲間の温かさに支えられているところもあるから、そこに浸って生きてきた私はもっともっと精進しなければ。それが目下の課題です。
10月から全国ツアーがはじまります(現在ツアー中~2022年5月まで)。エレカシ時代からずっと応援してくれている人たちなら、仮に私が歌詞を間違えても「ミヤジ、かわいい!」とか「オジサン、今日は気が抜けてるわ~」なんて言って見逃してくれるかもしれないけど、気を引き締めていかないといけません。緊張するけど、それも含めて楽しみです。