ただ、今の私は自分の中の、自分では認識していない何かに、可能性という名の希望があると感じています。もっと自分を生かす場所があるんじゃないかと模索しているというか。
20代の頃には考えられないこと
そのタイミングで、今回のアルバムにプロデューサーとして参加してくれた小林武史さんが「宮本、もっと尖った曲もあったほうがいいよ」と提言してくださったりして。自分の可能性を引き出してくれる人に、出会うべき時に出会えるというのは、我ながら強運だと思うんです。
アルバム『縦横無尽』には、小林さんが作詞作曲して、櫻井和寿さんと私がコラボレーションした「東京協奏曲」という歌が収録されています。人の心は移ろうものなんですね。だって「なんで俺たちの歌はミスチルみたいに売れないんだ!」と、コンプレックスでがんじがらめになっていた20代の頃には考えられないことですから。
そのほか、ドラマの主題歌として書き下ろした「P.S. I love you」「shining」「sha・la・la・la」、「浮世小路のblues」、NHK『みんなのうた』から依頼を受けて作った「passion」など、いずれも今年リリースされた曲が収録されています。
傍目には、私の活動はカバーアルバム一色のように見えていたであろう昨年の後半、実は新曲作りに取り組んでいたわけです。かなりテンパっていて、『ROMANCE』の余韻に浸っている場合ではなかったというのが正直なところ。ヒリヒリとヒヤヒヤが一気に押し寄せてきたという苦しい状況だったのですが、同時にこれ以上ないんじゃないかってくらいの多幸感に包まれていました。
求められていることの喜び、それに応えようと寝ても覚めても歌詞やメロディーのことばかり考えている自分。つらいのが楽しいというと変なんだけど、これぞ労働じゃないか、と。これこそが生きるってことだと、ダイナミックに実感する日々でもありました。