美大で見られる「否定的ダブルバインド」

じつはこれは、信仰宗教やブラック企業などが使う洗脳手法「否定的ダブルバインド」に似ています。「これがよい」「これをやれ」と指示したあとに、まったく逆のことを指示することで、信者や社員を混乱させ思考力を奪う方法です。

4年間それが続き、右往左往して卒業を迎えます。

卒業後、偶然画材店で同級生と遭遇したことがあります。アーティストとしての再会ではなく、その同級生は画材店に就職していたのです。

もちろん、画材店への就職が悪いわけではありません。ただ、4年間の私立美大の学費は年間約160万円と、超高額です。その結果が、画材店への就職。教育現場として、大学が機能しているといえるのでしょうか。

学生をどう育てるのか。そのビジョンが教育側にまるでないのは、美大の根本的な問題です。

いまの美大のシステムでは、教授陣は「いいものを作りなさい」と学生に対してざっくりとした指導をします。

必要なのは、どこへ向かっていけばいいのか、売れるための分析や戦略を教えること。それによって、学生は自分とすり合わせていくアプローチができます。にもかかわらず、それがない。

結局は、自分で手がかりを見つけていくしかありません。