ギャラリーオーナーが提示した意外な条件
僕がギャラリーから最初に声をかけてもらったのは、大学3年生のときです。
当時、僕はプロになる道を探っていて、ひとまず公募展へ作品(女性像の写実画)を出していました。その公募展の懇親会で、あるギャラリーの女性オーナーに「あなたが中島健太? あなたの作品、なかなかいいわよ」と話しかけられたのです。
ギャラリーにはいくつかの種類があるのですが、そこはレンタルスペースのイメージに近い「貸しギャラリー」と、作品を預かって収入とする「委託ギャラリー」の中間くらいのギャラリーで、お客さんを持っていました。そして、「グループ展に出さないか」と誘ってくれたのです。
グループ展への出展は、芸人でいえば、バラエティ番組に「ひな壇芸人」の一人として出るのに似ていて、何人かの画家の作品と自分の作品が一緒に並びます。
声をかけてもらい、喜んで引き受けました。ですが、そのオーナーが僕に提示した条件は意外なものでした。
「学生さんの展示をやることはあまりないから、保証金5万円がほしい。売り上げと関係なく、それはもらいたい」と言うのです。
それ以外、僕の前に道はありません。なけなしの5万円を支払って、人生初、ギャラリーでの展示をすることになりました。