1か月半かけた作品2点の儲け「3万円」

出したのは、小さい女性像の写実画2点。制作期間は両方で1か月半でした。幸い2点とも売れました。絵が売れたということは「プロ」の証なので、すごくうれしかったです。

その反面、現実をまのあたりにして、がっかりもしました。初の展示の結果、ギャラリーの取り分がまず引かれ、さらにそこから額代を引かれ、手元に残ったのは8万円ほど。その上、5万円は先んじて払っていますから、実質の売り上げは3万円です。

1か月半かけて作った作品2点の儲けが3万円。これでは、プロの画家として食べていくことはできません。

結局、作品をギャラリーに展示してもらうと、売り上げの半分ではなく3割しかもらえない。これは、だまされたわけではなく、いまでも常態です。

構造として、委託ギャラリーの場合、画家がもらえるのはほとんどが売り上げの3割なのです。

しかし、人生捨てたものではありません。ある芸術雑誌が、僕の作品を取り上げてくれたのです。「学生」だったこともあり、注目されました。

その後も、同じギャラリーでグループ展に2回出展しました。完売しましたが、やはりたいした利益にはなりません。だから、心のどこかでずっと納得ができませんでした。

大学生の立場からすれば、自分の絵に10万円くらいの値がついて売れていることは衝撃的な体験で、うれしくもある。けれど、僕のポケットにはその3分の1しか入ってこない。これ、何かおかしくないか、と。

しかし、続けるしか術はありませんでした。なぜなら、ほかの方法を知らなかったから……。

※本稿は、『完売画家』(CCCメディアハウス)の一部を再編集したものです。


『完売画家』(著:中島健太/CCCメディアハウス)

これまでに描いた700点の絵画がすべて完売。人気洋画家がその経験と冷静な分析から語る、芸術の世界での生き方と仕事の哲学。