笑ったり、ほろっとしたり

人間ってのは、しょせん、愚かなものですよ。僕だって、愚の骨頂だと、ず~っと思ってきました。つい上を目指してしまうのも、人間の愚かさでしょう。経済でもなんでも、右肩上がりがいいと思ってしまう。それは神様が、人間に欲望というものを持たせたから。だから、どんなお金持ちでも、現状では満足できない。これはもう、しょうがないですね。神様というのは、残酷だと思います。

その愚かなところに、ちっちゃな花が咲くというか――昭和の、山あいの村が舞台の『本日も休診』は、そんな世界観があふれていると思います。

エロスの描き方も、なかなかいいんですよ。僕はたまに、住んでいる地域の小学校で朗読を頼まれたりするんだけど、高学年には見川先生のエッセイから、ちょっとエッチなことが書かれているものを読み聞かせたりしてね。エッチなシーンもあえて端折らずに。子どもたちはみんなシーンとするというか、ピーンと張り詰めた空気になる。

今、そういう話は子どもたちにはしてはいけない、みたいな空気があるでしょう。でも、僕なんかは、ちょっと過剰に子どもを保護している感じがするんだよね。一方で、ネットでは過激なものがどんどん流通しているでしょう。なんだか、バランスがおかしくなっている気がしますね。

そんなこんなで、見川先生のエッセイは素敵だなぁと思い、舞台化することになったわけでして。笑ったり、ほろっとしたり、そんなお芝居になるんじゃないかと思います。

なにより、演じている人、作っている人が楽しくできればいいんじゃないかな。共演は笹やんこと笹野高史、ベンガルや佐藤B作など、昔からの仲間というか、戦友みたいなものだから。演出のラサール石井も、脚本の水谷龍二も昔からよく知っているし。「お願いしますよ」と話しただけで、パッと話が通じます。まぁ、なんというか、老人の同窓会みたいな感じです。(笑)

実際の見川先生は、長身で、なかなかカッコいいんです。だから僕なんかが演じるのは、本当はおこがましいんですけどね。がんばって、やらせてもらうつもりです。