やっぱり、芝居は恥ずかしいこと

基本、僕は今でも、アマチュア演劇をやっているつもりなんですよ。ただ、職業としてやっていくには、やはり映像や商業舞台にも出ないとね。

自分では、とくに忙しいとは思っていません。でも、たとえば取材で、「テレビや映画でお忙しいのに、舞台もやっていますね。本当にお芝居が好きなんですね」なんて言われるのは、イヤなんですよ。別に、好きとか嫌いとかじゃない。もちろん、嫌いではないからやっているんだけど、人前で何かやるわけですからねぇ。やっぱり、恥ずかしいことですから。

もう少し言えば、観ている人を感動させたいなんて、そんな野望を抱くわけでしょう。なんか、情けないですよ(笑)。そういう思いは、役者に限らず誰しも多少は持つかもしれないけれど、役者というのはそれが割とあからさまに見える仕事じゃないかな。そこには、自慢もあったりして。要するに、人から見られる仕事だから。それがなんか、恥ずかしいというか、いまだに慣れない、というか……。

「含羞」という言葉で表現したらいいのかな。

自分が芝居や映像を観る立場になった場合、含羞がない人は苦手ですね。「どうだ、オレは!」みたいな人は。

ところがなかには、「どうだ、オレは!」という感じが、むしろチャーミングに見える人もいます。同じことをやっても、「なんか、押し付けてくる感じがイヤだな」と感じる人と、「押し付ける感じが、かえって可愛らしいよね」みたいな人がいる。このあたりに理屈はないし、本当に難しいですね。