「どんな仕事でも、たいてい、《青春の誤解》から始まるものでしょう。要するに、実態を知らないまま足を踏み入れるわけだから」(撮影:大河内禎)
現在、東京・明治座で「田舎医者シリーズ」を原作とした舞台『本日も休診』の主演を務めている柄本明さん。「劇団東京乾電池」の座長として45年、団員を率いてきた。今も数多くの舞台、映画、テレビドラマに出演し、その迫力ある存在感で異彩を放っている。役者という仕事のこと、そして家族のこと――柄本さんの「今」は(構成=篠藤ゆり 撮影=大河内禎)

「青春の誤解」が大勢集まってくる

役者を始めて、何年になるのかなぁ。自由劇場に入ったときからとすると、50年近くになるんじゃないの?

どんな仕事でも、たいてい、「青春の誤解」から始まるものでしょう。要するに、実態を知らないまま足を踏み入れるわけだから。音楽をやりたいとか、絵を描きたい、文章を書きたい、芝居をやりたい、だの……。

僕の場合もそういった青春の誤解から始まって、たまたま役者が自分の身の丈に合ったのかどうかわからないけれど、いろいろな仕事が来るようになったりして。まぁ、そんなところですよ。

僕が座長を務める劇団東京乾電池も、創立して45年になります。劇団では、僕は演出もやっていますが、「青春の誤解」がけっこう大勢集まってくる。でも、すぐに青春じゃなくなりますからね(笑)。役者として残っていく人は、ごく一部です。だって、この仕事、宝くじみたいなもんだもん。だからねぇ、芝居をやろうなんていうのは、若い人には勧めないなぁ。(笑)