歌手のジェリー藤尾さんが、2021年8月、肺炎のため81年の生涯を閉じました。同居し晩年を支えたのは次女の板谷亜紀さん。離婚後は別々の人生を歩いていた元妻の渡辺友子さんもジェリーさんと和解し、最後の日々に寄り添ったそうです。そのいきさつは──(構成=吉田明美 撮影=清水朝子)
パパの体はまだ温かかった
亜紀 パパが亡くなって3ヵ月。今でも、あの日のことを思い出すと涙があふれてきます。
友子 土砂降りの夜だったわね。
亜紀 パパはいつも、用事があるとLINEで私たち家族を呼んでいたのですが、その夜はそれがなくて。おかしいなと思って様子を見に行ったんです。そうしたら、リモコンを持った手がだらんとしていて……。
友子 すぐに病院の先生と私に知らせてくれたわね。
亜紀 亡くなったことを受け入れるのは、つらかった。私が触れたパパの体は、まだ温かかったから。
友子 私も電話をもらってすぐ、駆け付けました。5日前に会った時はいつもと変わらない様子で、元気だったのに……。
亜紀 前の日も普通に話をしていたから、こんなにあっけなく逝っちゃうとは思わなかった。
友子 でも、最後は娘や孫、ひ孫と暮らすことができて、幸せだったと思う。眠っているとしか思えない、穏やかな表情だったもの。
亜紀 パパはママと和解できて、ほっとして天国に行ったんじゃないかな。私はそれが一番うれしいよ。