「パパはママが好きすぎたから、恨んで、悪く言うことで自分を保っていたんだと思う。《可愛さ余って憎さ百倍》って、パパのためにある言葉みたい。」(亜紀さん)

「俺の葬式に渡辺友子は呼ぶな」

亜紀 離婚後、ネネも私もママに会っていたんだけど、それがわかるとパパはめちゃくちゃ不機嫌になる。パパは、自分一人で娘たちを育てていることを誇りに思っていたし、それを世間にアピールすることで自分を奮い立たせていたんだと思う。でも、いちいち不機嫌になるから、いつしか藤尾家ではママの話題は禁句に。それで7~8年間、疎遠になっちゃった。

友子 パパにとって、私は家を出て行った裏切り者だから。

亜紀 パパは子ども時代、お酒に溺れるお母さんと、異父兄弟がいる複雑な家庭環境で育ったこともあって、家族というものに強いあこがれを持っていた。でも、愛情表現の仕方がわからなかったんじゃないかな。パパはママが好きすぎたから、恨んで、悪く言うことで自分を保っていたんだと思う。《可愛さ余って憎さ百倍》って、パパのためにある言葉みたい。

友子 娘たちの結婚式に出られなかったのは悲しかった。あの頃が、一番距離があったかもしれないね。

亜紀 今だから言うけど、パパは「俺の葬式に渡辺友子は呼ぶなよ。これは遺言だぞ」とまで言ってた。

友子 それでも、25年くらい前かな。亜紀が3人目を妊娠している時に、久しぶりに連絡してくれた。

亜紀 私も親になってみて、母親なら娘の妊娠している姿を見たいだろうなって思ったんだ。それからは、うちの子どもたちは3人ともママのことを「あーちゃん」と呼んで、しょっちゅう面倒を見てもらうようになった。

友子 パパには内緒でね。

亜紀 そうなの。5年前、私の長女が結婚式にママを呼びたいと言った時も、パパがいい顔をしないから、「パパとママが離婚したのは私とネネのせいなの? 私たちを巻き込まないで!」と大喧嘩に。

友子 亜紀の説得のおかげで孫の結婚式に出席できて、とっても幸せだったわ。その時、パパとツーショットも撮ったわね。

亜紀 パパは実はうれしかったんだよね。それなのに、結婚式のあと「もう渡辺友子には会いたくない」とわざわざ私のダンナに言ってきたのよ。もう、どれだけ素直じゃないの? と思った。