「日頃から一人の人間としての生活を大切にして、身の回りの出来事からいろいろ感じ、過ごすことが、良い芝居を生むために必要なのではないかと思っています。」(撮影:小林ばく)
ひたむきに野球に打ち込む少年役を演じたデビュー作で注目を集め、俳優の道を歩み始めた林遣都さん。30歳を迎えた今年、ファンタジックなラブストーリーで新たな表情を見せる――(撮影=小林ばく 構成=上田恵子)

救われたのは僕のほう

20代前半の頃、旅番組の撮影で南米を訪れた際に、世界中を旅している写真家に出会いました。その方が言っていたんです。「他人を悪く言っていいことなんてひとつもない。誰かの幸せを願って生きていたほうが絶対にいいことが起こるよ」と。その言葉がものすごく胸に響いて、人生観が大きく変わりました。

それ以来、たとえ嫌なことがあっても誰かのせいにしないこと、つらい時もネガティブな気持ちをいったん切り離して、周囲の人の幸せを思うことを心がけるようになりました。

さまざまな人の人生を疑似体験して、「お芝居という偽物」を本物らしく見せるのが僕らの仕事です。ただ、偽物とはいえ自分の内側にある感情が豊かでないと、役の気持ちに寄り添うことはできません。日頃から一人の人間としての生活を大切にして、身の回りの出来事からいろいろ感じ、過ごすことが、良い芝居を生むために必要なのではないかと思っています。

以前、僕の出演した作品を観てくださった方から「苦しいことがあった時期に、林さんのドラマを観ることで命を救われた」と言っていただいたことがあります。でもそれは僕も同じなんです。「むしろ救われたのは僕のほうです」とお返ししたいくらい。

役者というのは、人から求められないとやっていけない仕事です。僕のお芝居から生きる力を得てくださったなんて本当に嬉しいですし、次の作品でもそう言っていただけるように頑張ろうと思えます。