理解してくれる人との絆を大切に
周囲に信頼できる人がいるなら頼ってもいい。コロナ下の今は特にそう思います。つらい時に一人で抱え込まず、ちょっと周りを見回してみることがすごく大事なんじゃないかなと感じます。
僕自身もこの仕事を始めてから、人と比べて落ち込んだり、悔しい思いをしたりと、考えが卑屈な方向に行くことがあります。自分でもそういうところが嫌いなのですが、わかっていても感情をコントロールするのは難しいですし、一人では解決できないこともあります。
また僕の場合、一度考え込んでしまうと、そこから抜け出せなくなることが本当に多くて。お芝居が思うようにいかなかったり、自分の思い描いたことができなかったりすると、いつまでも同じところをグルグルしてしまうんです。直したいと思ってはいるものの、なかなかうまくいきません(笑)。
それだけに、僕の存在を肯定して励ましてくれる仲間や、ずっと一緒に仕事をしてきて僕という人間を理解してくれている人たちとの絆は大切にしています。
また、もともと趣味が少なく、どうしても仕事に没頭しがちなので、今後は上手に気持ちを切り替えられるよう、夢中になれるものを増やしたいとも思っています。映画や舞台はよく観に行くのですが、つい自分の表現につながる何かを探してしまって(笑)。最近、意識して観ているのはドキュメンタリー番組です。人間を知ることができますし、得るものも多いです。
コロナ禍で、エンターテインメント界も大きな打撃を受けました。僕自身、今年の1〜2月に大竹しのぶさん主演の舞台『フェードル』に出演させていただいた際、緊急事態宣言の影響で初日が延期になるという経験をしています。
この状況下だからこそエンターテインメントに何かを求めて、勇気を出して劇場に足を運んでくださった人、観劇を諦めざるをえなかった人など、いろいろな方がいたはずです。そういうさまざまな思いを感じながら立った舞台でした。エンターテインメントの持つ力に触れて客席で涙している方々を目にした時は、この仕事に誇りを感じて胸が熱くなりましたし、舞台の中心に立つしのぶさんの姿を見ながら、この仕事をずっと続けていきたいとあらためて思いました。
せっかく人に喜びを与えられる仕事に就けたのだから、もっともっと努力しなくては──。今はそんなふうに考えています。