「僕は、子役時代からあまり途切れることなく舞台に立っているので、順風満帆のように思われますが、挫折ばかりだったと感じています」(撮影:本社写真部)
7歳で舞台デビューし、数々の舞台で主演を務めてきたミュージカル俳優の海宝直人さん。2021年1月には故・三浦春馬さんに代わり、日英合作の舞台『The Illusionist─イリュージョニスト─』の主演も務めた。現在は福岡・博多座で『王家の紋章』に出演している。キャリアは長くても、まだまだ落ち込むこともあるとか…。もう1足のわらじ、バンド活動についても聞きました(構成=岡宗真由子 撮影=本社写真部)

舞台俳優仲間と朝ドラに出演

2020年に出演したNHKの朝ドラ『エール』はとても丁寧に作品作りをしている現場でした。実際、僕も1ヵ月以上前からオペラ考証の先生に指導していただき、オペラ歌手の役を演じました。『エール』には山崎育三郎さんを始め、ミュージカル俳優がたくさん出演しています。実は以前、吉原光夫さん、橋本じゅんさんとご飯を食べている時に、朝ドラの話題になりました。結局その後、その場にいた3人で共演することになって驚きましたね。

僕が演じたのは、二階堂ふみさん演じる「古山音」さんと舞台で共演するはずだったオペラ歌手の役です。音さんが、実力不足にもかかわらず、話題作りという大人の事情で起用されてしまい、共演者にも冷たい目で見られて苦悩する、というエピソードでした。

僕の演じるオペラ歌手・伊藤は、そんな音さんに苦言を呈する。これについては、オペラ考証の先生と雑談で「役者同士というのは、実際にそういった実力不足の出演者がいたとしたら、それは役者のせいではないし、もっと団結してなんとかやりやすい環境をみんなで作るだろう」と。

伊藤のプロフェッショナルな立ち位置は理解できても、僕自身は相手役にあんなに冷たい言い方はできない……つらい役でした。あれは経営陣に媚びて、無理やり音さんを起用した演出家役の橋本じゅんさんが悪い、という結論になりました。(笑)

僕の母は、ミュージカル鑑賞が大好きなんです。また、父は音楽が好きで、オールディーズからポップス、サザンやTUBEのような歌謡曲、イージーリスニング、オーケストラ曲まで幅広いジャンルを聴いていて、それがいつも自然に耳に入ってくるという環境で育ちました。

姉のあかねは4歳で『アニー』の子役として舞台に立つことになり、それにくっついて僕もベビーカーに乗せられ劇場へと通っていて。僕は1996年、7歳でオーディションを受けて、『美女と野獣』のチップという役でデビューします。続いて弟の潤も舞台に立ち、姉弟3人みんなが舞台の仕事に携わることができたのは、幸運だったと思います。