「海外での舞台は、これからも機会があればぜひ挑戦したいと思っています。僕は特にロンドンの空気、テンポ感が好きです」

役者の仕事は万国共通

2018年にはロンドンの舞台に立つという経験ができました。役を一人一人が深めていく役者の仕事は万国共通なんだとわかり、大きな収穫でした。ただ厳密に比較すれば、日本人の役者は欧米の役者と比べて、演出家に対して真面目で聞き分けがいいのかもしれません。『レ・ミゼラブル』の演出陣もまず、日本人の役者が全員集合時間にそろっていることに感心したそうです(笑)。個の文化と和を重んじる文化の違いが、演劇の世界にも反映されているんですね。

海外での舞台は、これからも機会があればぜひ挑戦したいと思っています。僕は特にロンドンの空気、テンポ感が好きです。イギリスはシェイクスピア生誕の地で、クリエイターも役者も観客も成熟している演劇の本場。向こうでは4、5年も前から一つの作品に取り掛かります。お披露目する前にプレビューを繰り返して、その反応次第で台詞もセットも変えたりしながら、揉んでいく。とても丁寧に作られているんです。

ワークショップを経て作品を作ることも普通。ワークショップはクリエイターにとっても役者にとっても勝負の場です。一流の俳優が、台本読みしてブラッシュアップしていく。そこでは役者も台詞やストーリーに口を出す。そうして台本作りの段階から参加していくと、役者一人一人が役に責任を持つようになるし、より作品の中枢に携わることができるのです。

日英合作の新作舞台『The Illusionist-イリュージョニスト-』も本場イギリスの流れと同様、19年秋にワークショップが開かれました。楽しくて刺激的な場になりましたし、僕も三浦春馬さんとご一緒して、彼の作品への熱意を間近で感じていました。

春馬さんに初めてお会いしたのは17年、読売演劇大賞の贈賞式です。トイレで偶然顔を合わせて。僕の主演する『ノートルダムの鐘』を観たいと言ってくださっていると人づてに聞いていたので、お話ししました。そうしたら「もう観に行きました」と言って感想も言ってくださって。「今度ぜひ一緒に舞台に立ちたいですね」という会話を交わしたのです。

共通の親しい知人がいたこともあり、それからはお互いの舞台を観に行っていました。『ロカビリー☆ジャック』も観にきてくださったし、20年の3月11日には春馬さんご自身の主演舞台『ホイッスル・ダウン・ザ・ウインド~汚れなき瞳~(以下WDTW)』が上演期間中(コロナ禍で途中休演)で大変な時期だったにもかかわらず、僕の『アナスタシア』にも来てくださいました。そして僕も3月27日、春馬さんの『WDTW』を観に行きました。