エンターテインメントが人々の心に火を灯す

実はコロナの感染拡大によって、この日が、春馬さんの舞台の千秋楽となってしまったという日でした。最後の舞台挨拶で、春馬さんは『アナスタシア』と、題名こそおっしゃいませんでしたが、先日あるミュージカルを鑑賞して、役者とその後ろで働くスタッフの物作りへの情熱を感じ、エンターテインメントってなんて温かいんだ、と思ったという話をしてくださいました。

「今はエンターテインメントが不必要な時なのかもしれないが、またいつか必ずエンターテインメントが人々の心に火を灯す」とおっしゃる春馬さんも泣いていて、客席で聞いていた僕も涙が止まらなかった。ずっとずっと準備してきて、それなのになすすべもなく幕を閉じざるをえないという無念な思い、それでもエンターテインメントの力を信じる、という強い思いを同じく胸に感じていました。

そしてその後、今回の舞台を演出するトム・サザーランドさんと話して、絶対に最高の形でこの作品を世に届けるんだ、という熱意を彼からも受け取りました。自分にできることがあるなら、と僕も誠心誠意、全力を尽くしてアイゼンハイムという役を引き受けるべきではないかと思いました。春馬さんの、演劇やこの舞台に対する思いをつないでいくというのはこのカンパニーの思いでもあります。

 

演劇用語で「幸運を祈る!」

2020年12月には、ソロとして2枚目のアルバムを出すことができました。アルバム名は『Break a leg!』。直訳すると「足を折れ!」という物騒な言葉ですが、演劇用語で「幸運を祈る!」という意味。ジャケットの写真と、「Defying Gravity〜自由を求めて」のMVに出てくる大きな時計の時刻に、ちょっとだけ秘密があります。人生の節目のアルバムということで……。あれは僕の生まれた時間なんです。

「CYANOTYPE」のメンバー。中央が海宝さん。左が西間木陽さん、右が小山将平さん(写真提供◎海宝さん)

ステイホーム中は、配信コンサートやLINEライブに挑戦しました。シンプルに歌声を届けるということに集中し、研ぎ澄まされた時間を過ごすことができました。オンラインライブは、お客様の顔が見えないのが寂しい半面、コメント欄があって、お客様同士はリアルタイムで感想を言い合うことができます。僕もお客様の質問をその場で拾ったりして、普段できないダイレクトな交流ができて新しい楽しみがありました。

こんな時代なので、アルバムは少しでも元気になってもらえるような、皆さんに寄り添えるような選曲にしたつもりです。また、2021年8月にはミニアルバム『PORTRAITS』をリリースし、その中の「紬-tsumugi-」は『ダウンタウンDX』の9月から10月のエンディングテーマに採用していただきました。ぜひ聴いていただければと思います。

海宝直人さんが率いるバンド「CYANOTYPE(シアノタイプ)」より
Mini Album「PORTRAITS」が好評発売中。
https://www.cyanotype.jp/