「心にさらなる負荷をかけてつらくなるくらいなら、いっそダメなところも肯定してしまって、自分を甘やかすのもアリなのではと思います。」

想像力を働かせて思いやりのある世界に

最近よく思うのですが、顔の見えないコミュニケーションって難しいですよね。インターネットはその代表格ですけど、人と人はそう簡単にわかり合えるものではないし、対面に比べると、どうしても物理的・心理的な距離が生まれやすくなってしまう。リモートでのやり取りも増えている今、生身で向き合うことの大切さをあらためて感じています。

特に僕らは「本人」が見えない仕事をしていて、それゆえに表面的な部分だけを切り取られたり、ごく一部の情報で判断されることもあります。でも人間って、そんな単純な生きものではないはず。もっとおのおのが想像力を働かせてお互いを思いやれる、優しい世界になるといいなと思います。

今回、僕が出演した『恋する寄生虫』はまさにそんな映画で、ファンタジックな空気感のなか、他者とコミュニケーションを取ることが苦手な男女の恋愛が丁寧に描かれています。僕が演じるのは、極度の潔癖症のせいで人間関係を築けずにいる孤独な青年・高坂賢吾。彼が、小松菜奈さん演じる視線恐怖症で不登校の女子高生・佐薙ひじりと出会ったことで、2人を取り巻く世界が徐々に変わっていくというストーリーです。

重いテーマも含まれているものの、お話をいただいた時から、小松さんと柿本ケンサク監督ならば、この作品を抜群の説得力を持って表現なさるのではという期待があって。ラブストーリーやファンタジー作品の経験はあまりない僕ですが、思い切って挑戦させていただきました。

高坂と佐薙は、社会にうまく適応できないことにコンプレックスを感じ、半ば人生を諦めている人間です。欠点やコンプレックスの類は、克服できるのであればそれに越したことはないのでしょうが、僕は、そんなに無理をする必要はないんじゃないかなと考えていて……。心にさらなる負荷をかけてつらくなるくらいなら、いっそダメなところも肯定してしまって、自分を甘やかすのもアリなのではと思います。