弱った心に効く「目薬」「日薬」「口薬」
とはいえ、どうしても落ち込んだり気分が滅入ったりしてしまう人もいるでしょう。クリニックを訪れる中高年女性に多いメンタルの不調としては、「ひょっとしてどこかに悪い病気が隠れているのではないか」という病気不安症があります。ほかに、めまいや体のしびれなどに悩まされ、診断して病気が見つからなくても自分は重い病気ではないかと不安を訴える身体症状症なども。また、不眠の訴えも尽きません。
こうした患者さんと向き合うとき、私はネガティブ・ケイパビリティの考え方とともに大切にしていることがあります。それは3つの「薬」です。
いつもあなたのことを見ているけれど、こんなに問題を抱えながら本当によくやっていますね、という「目薬」。状況を見守り、必要に応じてサポートしていく方法です。
2つめは、人間の小さな脳みそでいくら考えても答えが出ないことがある、それは日々が解決してくれるという「日薬」。時間をかけて何とかしていくうちに、何とかなります。
3つめは、「がんばって」とは決して言わずに、「めげずに、よくここまで来ましたね」と声をかける「口薬」です。こう言うと患者さんは安心するみたいですね。
さらに、日々の暮らしを忙しくすることをすすめます。一通り新聞を読み、日記をつけ、町内会の役職を引き受けるなど、忙しくして暇を作らないことは大事です。悩む時間がないから、忙しい人は病気を口にしません。
悩みや不安があっても焦らず、悩めばいい。ハラハラ、ドキドキの状態もまた楽しんでみてはどうでしょうか。大局に任せれば、自然と出口が見えてきます。