70歳や75歳を過ぎたらもっとワガママに生きてもいい
だから、どうせ老眼鏡をかけるなら、さまざまな色やデザインのものを試してみたいと、作品をひとつ仕上げるたびに、自分へのご褒美として新しい老眼鏡を新調しています。「この眼鏡の色に合うのはどのブローチかしら?」なんて考えると、ウキウキしますしね。
『書を捨てよ、街へ出よう』じゃないけれど、気分が沈みがちなときは、靴を履いて外に出るといいんです。私も仕事に追われていないときは、毎日のように散歩に出かけます。同じ道を歩いていても、今日はきれいな花が咲いていたとか、新しいお店ができていたとか、日々、小さな発見がある。60代半ばで越してきた鎌倉の町は細い路地がいっぱいあるので、いつもと違う小道に入ってみるだけで、知らない風景に出会えます。
どんな町でも楽しみ方はいろいろ。知らない路線バスで終点まで行ってみるとか、降りたことのない駅で電車を降りてみるとか。コロナ禍になってから以前のように出かけられなくなりましたけど、想像力と冒険心さえあれば、庭のアリを見ているだけでも楽しいですよ。
「こんなことをしたら、どう思われるか」と、日本人はとかく他人の目を意識しがちですが、70歳や75歳を過ぎたらもっとワガママに生きてもいいと私は思います。それまでは家族との生活があったり、お仕事をしている方もいらっしゃるので何かと我慢しなくちゃいけないこともあるけれど、そのぐらいにもなれば、もはや自分がやりたいことを思い切りやってもいいでしょう。
80代になった頃から、さすがに少し歳をとったと感じるようになりました。でも、いくつになっても、じっと待っているだけでは楽しいことはやってきません。この先も現在進行形で前に進みつつ、物語を書くという大好きな仕事を続けていきたいと思っています。