さださんはフォークというよりパンク
さだ 心がけているのは、そろそろ忘れられそうな被災地に行くこと。10月だと4日に熱海に入って、「風に立つライオン基金」に寄せられた義援金をお届けに上がりました。現場も見せていただいたけど、胸がつまりますよ。でもね、僕らが行けば報道陣が集まる。忘れ去られそうになってるところに、またスポットが当たるでしょう。そのためにさだまさしを使おうと割り切るようになりましたね。
鶴瓶 俺は、阪神・淡路大震災に直面してるから。震災から10日くらい経ったころ、「皆さん、要るもん言うてください。俺買うてくるよ」言うたら、「うー」って熱でうなされてるような人が「笑わしてー!」って言った。それで決心がつきましたね。
地震に遭うた日からその日までの話を、1時間くらいしゃべったかな。そうすると、まず子どもが笑う。子どもが笑うと、その親が笑う。で、ヤンキーも笑う(笑)。最後に人のアーチなんかつくってくれて。
さだ 被災地で活躍してくれる人に、元ヤンキーって多いんですよ。
清水 情が厚いからかなあ。
さだ あり余るエネルギーをうまく表現できずに暴れてた連中って、誰かのためになることに、ものすごく情熱を傾けますね。だからある程度の年齢になったとき、ボランティアをはじめる人が多い。
鶴瓶 自分が誰かの役に立ってることが嬉しいやろね。
さだ 正義感も強いから、避難所で偉そうにしてる人にかみついたり(笑)。どこかで災害が起きると、「さださん、明日現地に入ってもいいですかね」なんて直接電話がかかってきます。だから、こちらも支援活動に本気になる。
鶴瓶 この人、なんでこんなにいろんなことをうまく仕切れるんかなと思ったら、『ファミリーヒストリー』見て、納得した。ひいおじいさんは、やくざやったもんね。
さだ やくざって……。いや、母方の曽祖父は、長崎港の港湾荷役を取り仕切った岡本組という廻船問屋の親分だったんですよ。まあ昔の侠客というか、町の顔役です。
鶴瓶 その血が流れてんねん。
清水 言われてみれば、さださんってパンクな雰囲気なんですよ。
鶴瓶 そうそう、フォーク言うてるけど、フォークよりパンクよ。
さだ ちなみに父方の祖父は、陸軍省のスパイとして台湾、中国、果てはロシアのウラジオストクまで渡ったそうです。父方の祖母は、現代の価値で言うと月に1000万円くらい売り上げる日本料理屋をウラジオストクでやっていて、そこに敵の官憲に追われた祖父が逃げ込んできた。で、匿った女将さんと一緒になるわけですよ。
清水 うわー、映画みたい。
鶴瓶 ほらな。やっぱりこの人、こんな優しい歌書く人の血、ちゃうねん。(笑)