「お達者クラブ」ならぬ「お達者ブラフ」

コロナ禍の前は、みんなでパブに集まっても、やれ腰が痛いだの、夜中に何回もトイレに起きて残尿感があるだの言い合って「お達者クラブ」みたいになっていたにもかかわらず、なぜか彼らが自らの健康を示すためにブラフ(はったり)をかますようになったのである。

「久しぶりにジムに行ったらさー、俺が軽々と40キロのダンベルを上げたから、若いやつらがびっくりして見てた」

「俺なんか昨日、プールでキロ泳いだ」

「俺、自転車で州境まで行ってきたぜ」

などと、ビールのパイント片手に腰に手を当ててフィットネス自慢をしている。が、そんなに筋肉がついている感じでもなく、相変わらずのビール腹である。これでは「お達者クラブ」ならぬ「お達者ブラフ」だ。でもよく聞いていると、彼らはこんなことも言っている。

イラスト=平松麻


「もう、これからは体が資本よ。あちこちガタがきてるようでは、生き延びられねえ」

「そうそう。車だってガソリンがないと走らないし」

「食料不足もいよいよ深刻になったら、自分たちで畑ぐらい耕さないと」

「燃料不足で光熱費も上がるから、今年の冬は暖房もつけらんねえぞ。寒さに負けない強い体を作らないと」

そう、これが英国の現状なのである。大型トラックの運転手不足(EU離脱とロックダウンのダブルパンチで、移民ドライバーたちが自分の国に帰ったことのしわ寄せがきている)で、スーパーに食料が届かないわ、燃料車の運転手不足でガソリンは輸送不可能だわで、国中がパニックに陥っている。