突如としてヘルシーサイドを歩き出したのは

つまり、連合いの友人のおっさんたちは健康になっておかないとこの冬をサバイバルできないという切実な思いから体を鍛え始めたのだ。若者なら車でガソリンスタンドの前の長蛇の列に並んでも平気だろうけど、トイレが近い60代の男子はそんなに何時間も我慢できない。スーパーでだって、彼らの世代は古き良き時代のジェントルマン気質だから、子どものいる家族連れや老人に「どうぞ、どうぞ」とパンなどを譲ってやせ我慢している間に自分の食べ物がなくなるだろう。燃料不足で光熱費が劇的に上がれば、労働者にはセントラルヒーティング(暖房装置)を長時間つけっぱなしにはできない。ブラフのひとつでもかまさないとやってられないぐらい先行きは不安なのだ。いくつになってもワイルドサイドを歩いていたはずのおっさんたちが、突如としてヘルシーサイドを歩き出したのには、ちゃんと理由があったのである。

「この食料不足でクリスマスを迎えたら、七面鳥とか奪い合いだろうな」

「うん。クリスマス・プディングも」

「プディングぐらい、今年は自分で作る気概を持っとけ」

「いやでも、材料がスーパーにないと作れないだろう」

彼らの会話を聞いていると、いったいここはどこの国なのだろうという気分になるが、これが2021年秋の英国のリアルな街の声です。スタジオにお返しします。