十八代中村勘三郎さんと関さん。十七代から二代にわたるお付き合い(写真提供:関さん)
人間のいいところだけを見つめて書いていきたい──あまたの著名人に取材を続けて半世紀。エッセイストの関容子さんが八十路半ばの今、スターたちとの出逢いや思い出、そして書き手としての原点を振り返ります(構成=篠藤ゆり)

一瞬の情景をいつか書きたいと

――1955年に創刊されたタウン誌の先駆け『銀座百点』。豪華な執筆陣でも知られ、銀座の心意気を伝えている。その『銀座百点』に、歌舞伎俳優や文学者に関する著作で知られる関容子さんが3年半にわたって連載した「銀座で逢ったひと」が、このたび1冊の本としてまとまった。

この本に登場する38人は、女優や俳優、文学者、歌舞伎役者、音楽家などジャンルはいろいろですが、皆さんすでに鬼籍に入った方々です。一番〈先輩〉にあたるのは、詩人の堀口大學さん。葉山のご自宅に2年ほど通って書いた本が、私のエッセイストとしての出発点になりました。

当時、大學先生は84歳でしたが、矍鑠としてらして、艶めいた冗談もおっしゃる。取材に通ううちにお手紙もいただくようになり、日本語の華麗な美しさに息を呑みました。

雑誌連載が終わり、角川短歌愛読者賞に選ばれた際は、パーティーに「聞き上手 書き上手 次のお仕事が待たれます。今宵の晴れやかなお姿をしのびながら――堀口大學」という祝電を送ってくださいました。