職を失っても不思議と心は穏やかだった

2020年4月7日、この日初めての緊急事態宣言が出され、百貨店は軒並み休業になった。

社員ですらいきなり自宅待機を命じられ、先行きの見えない不安に飲み込まれた。
その中で派遣はもっと宙ぶらりんで、派遣会社に問い合わせるものの、「休業になった分の給料は補償できません。」としか言われなかった。

こうして私は無職になった。

でも、不思議と心は穏やかだった。
もともと就活のつなぎのつもりで短期の契約だったのと、並行して5月以降の働き先を探して面接を受けていた、というのもある。
でも一番は、派遣の立場の弱さや理不尽な扱いに、慣れきっていたからだ。

派遣は雇用の調整弁、などといわれるが、本当に実に使い勝手がいい。
社員の補助という建前で、社員並みの業務をいきなり振られても、前日に読み込んだマニュアルに沿って働く。会社都合で予定がキャンセルになって急に仕事がなくなっても、補償がなくても文句も言わない。

「マネキン」としてスーパーで試食販売をしていた頃のエプロン姿(写真提供◎ヒオカさん)