突然仕事が無くなることは日常

派遣の販売スタッフは《マネキン》といわれる。だが、マニュアルには、「本当のマネキンのように笑顔で立っているだけだと怒られます」という注意書きがある。
現場では《マネキンさん》と言われることもある。
確かに本当のマネキンのように突っ立ているだけのことはまずないが、意志も感情も持たないもの、として扱われていると感じることはある。

コロナによる一斉休業は青天の霹靂で、雇用形態に関係なく、多くの人が路頭に迷ったことだろう。
しかし、短期派遣をしていると、突然仕事が無くなる、ことはもはや日常だ。

百貨店に入職する前、2020年2月から3月頃にかけて勤めていた菓子店でも、ショッピングモールが土日休業になり、加えて全体的に客足が遠のき、売り上げの落ち込みによって本社からスタッフを減らすよう通達があり、シフトは軒並み削られた。 

2020年3月に働いていた菓子店はソラマチの中にあった。その時撮影したスカイツリー(写真提供=ヒオカさん)

他にも、コロナ禍は関係なくこのようなことはある。スーパーのクリスマス抽選会で実働9時間の契約だったのに、社員が早く終わらせるために、ガラポンの外れの玉を減らした結果、4時間で終わってしまい、私達の5時間分の給料がでなかったことがある。

最後のほうは当たりの玉しかなく、USJのペアチケットが当たった(それしか玉がなかったのだが)男の子に満面の笑みでおめでとう、と言う社員の隣で、派遣たちの顔は灰色によどんでいた。

また、あるときは、化粧品の販売の派遣スタッフの前日研修で、「すみませんがキャンセルさせてください」と言われ、2週間分の仕事がなくなったこともある。もらえるはずだった十数万円の給料が、一瞬で吹き飛んだ。

理由は「ニキビがあるって、知らなかった」からである。