「もし、環境が整うのであればもう一度チャレンジしたい。できなければ私は一生後悔するかもしれない、そんな思いがふつふつと浮かびあがってきました。」(写真提供:幻冬舎)

乳がんの治療と不妊治療は真逆のアプローチと知り

不妊治療をしていたことが命拾いにつながったわけですが、実は乳がんの治療と不妊治療は真逆のアプローチ。私はそんなことはつゆ知らず、がんを治療してくれる先生に「不妊治療はやめたほうがいいんですか?」と呑気に聞いていました。

当然、不妊治療はそこで強制終了。治療期間は2年半ほどでしたが、かかった費用はおそらく1千万円近かったと思います。今まで何に対しても一生懸命になれなかった私がいちばん頑張ったのが不妊治療でしたから、未練しかありませんでした。

しかし、命あってのことなので、乳がん治療を優先することにしました。実は手術前に、採卵だけはできると乳がんの主治医に告げられたのですが、私は夫に「もういい」と言ったんです。だけど、夫から「後悔しないために採卵したほうがいい」と言われてやはりすることに。でも結局、卵子は採れずじまいで、もう体が限界で無理なんだと思いました。そして、不正出血のために胚移植できなかった受精卵をたった一つ残し、乳がんの治療に入ることにしたのです。

でも、その後も毎年、凍結した受精卵を更新するか、破棄するか、クリニックから連絡がくるんですね。もともと破棄する気はありませんでしたが、術後、片づけをしている最中に夫の小さい頃の写真が出てきて、それを見ると本当にかわいい。

もし、環境が整うのであればもう一度チャレンジしたい。できなければ私は一生後悔するかもしれない、そんな思いがふつふつと浮かびあがってきました。