死んでもいいからやってみたい

しかし、19年にがんが再発し、子供への思いはまた中断。それでもどうしても諦められなかった。そこで、20年に遺伝子検査を行うことにしました。遺伝性だったら残っている胸も卵巣も、予防のために摘出手術しようと思ったんです。

その結果、遺伝性ではないことがわかり、まだ卵巣は残せることから不妊治療を復活したくなりました。その気持ちを夫に伝えると、「ひかるちゃんがそう考えるなら全力で応援する。がんから復帰して妊娠した人の最高年齢を目指そう」と言ってくれたんです。

夫婦の気持ちが固まったので、不妊治療の再開について、思い切って先生に相談しました。乳がんの治療をストップすれば、再発や転移のリスクは当然上がる。死んでしまう可能性は当然高まるし、子供が絶対にできる保証もない。反対されることは覚悟していましたが、先生はこう言ってくれたんです。

「たった一度の人生ですからね」と。

そのひと言で、凍結している私たちの受精卵を迎えに行こうと、決心がつきました。

私にとって、たった一つ残してあった受精卵は、まるでドラゴンボールのような存在でした。宝物がそこにあるなら迎えに行きたい。生きているうちに、やっておきたいという気持ち。

もちろん、怖いか怖くないかと言われれば、それは怖い。けれど、これまで何にも熱くなれなかった私が、死んでもいいからやってみたいことがあるって、幸せなことだと思ったんです。