入院患者の言葉に救われ

寝不足とネガティブな考えにがんじがらめになっていた私はほかの患者さんとお話しする勇気が出なかったが、ある日思い切って、60代と思しき穏やかそうなBさんに悩みを打ち明けた。

「あなた、そんなに痩せてるかしら? 私なんて拒食症になった時、身長155センチで30キロまで痩せたけど、治療したら3ヵ月で5キロ増えて半年で40キロに。安定剤や心身のリラックスとかいろいろ効いたと思う」と、あっけらかんと答えてくれた。

「寿命は決まっていると言う人もいるでしょう。とりあえず生きている間は生きることが許されてる。そこまでは生きよう、と思えば怖くないんじゃない?」と明るく笑って言ってくれた。

患者さんたちの前向きな話を聞いているうちに、服用を始めた薬の効果もあるのかもしれないが、ご飯や味噌汁、卵焼きなどを少しずつ完食できるようになってきた。そして体重もゆっくりと増えて、約1ヵ月後には2キロ増えた。

70代のCさんから、ある日声をかけられた。「手術前の体重や体力に戻りたいっていうのは、無理だと思うよ」とのこと。そして「私は子宮がんや卵巣がん、大腸がんで3回も開腹手術を受けて痩せたりしたけど、なにより生きてるんだから。あたしは新しい自分になったんだ、って思うことにしてるの。元に戻ろうとしたって戻れないんだから『新しいワ・ タ・シ』でいいじゃない」と茶目っ気のある笑顔を見せてくれた。