日本をいい国にするためには

「悩む」というのは「感情」の所産。「考える」は「理性」です。何か起きた時、人はとかく悩むものです。でも、それは余計なこと。悩んだところで、答えは出てきません。憂鬱になり、落ち込むだけです。

追い込まれた時に最も必要なのは、知性、そして理知です。難しいかもしれませんが、感情は脇にどかしておいて、理知を働かせましょう。

もちろん、簡単なことではありません。だからこそ、お釈迦様をはじめ、いろいろな聖人や宗教者たちが、その道筋を模索したのです。

最近、日本という国に対して自信を失っている人も少なくないようですが、歴史を見直せば違って見えてくるはずです。

たとえば日本の漫画やアニメーションは、世界を席巻しています。私も、宮崎駿さんの『もののけ姫』と『ハウルの動く城』で、声の出演をいたしました。

日本の漫画やアニメの歴史は、平安時代にすでに始まっています。有名な『鳥獣戯画』は、絵巻物になっているので、まさにアニメの原型と言えます。

江戸時代の漫画などに出てくる妖怪は、どこかユーモラスですね。ふんどしのお化けなんて、笑ってしまいます。葛飾北斎の『北斎漫画』に出てくる提灯のお化けなども、どこかかわいらしい。そこへいくとヨーロッパのドラキュラなどは、陰惨な感じがあります。

宮崎駿さんのアニメーションには、そういった伝統が受け継がれている気がします。「そこがすばらしい」と、うんと褒めて差し上げました。

最近は、さまざまなロボットが登場していますが、その原型は、とっくの昔にあります。

一番古いからくり人形は、「指南車」と呼ばれるもので、『日本書紀』にも出てくる。江戸時代にはお茶を運ぶ人形など、精密な人形が盛んに作られるようになりました。

今はすべてがデジタルの世の中ですが、日本には、すばらしいアナログの文化がありました。それを忘れてほしくないのです。

すべてがIT化され、確かに便利にはなりましたが、ロマンチシズムや情緒は失われつつあります。きちんと歴史を見て、理性的に分析し、守るべきものは守っていく。そうすれば日本はきっと、この先、いい国になると思います。