歴史を振り返ればそこに答えが

21年は、真子さんのご結婚について世の中、喧々。天皇制に関しても、やれ、男系男子でないとダメだとか──。

でも、それとて冷静な目で歴史を眺めたら、答えはちゃんと書いてあります。過去に持統天皇や孝謙天皇をはじめ、全部で8人の女性天皇がいました。江戸時代にも、2人いたそうです。

源頼朝の妻の北条政子のように、女性でも戦軍を率いた人がいます。木曽義仲の愛妾だった巴御前は、敵将の首をねじ切ったと言われています。男だから、女だからと性別にこだわるのが、そもそもおかしいのです。

オリンピックやパラリンピックを見ると、過去には男性のみの競技だと思われていた種目で、日本人女性選手の活躍が目立ちました。重量挙げやレスリング、ボクシング、サッカー、ラグビーなども、今では男女平等に行われています。

最近は多様性が大きなテーマとなり、LGBTの権利についても関心が高まっていますが、この問題も歴史を振り返ると、かつて日本で男性同士が愛し合うことは珍しくなかったことがよくわかります。

織田信長とだった森蘭丸の関係は有名で、明らかに二人は愛し合っていました。また、江戸幕府五代将軍・徳川綱吉の小姓だった柳沢吉保は、寵愛を受けて側用人に取り立てられ、大変出世したそうです。吉保は、全国から美少年を集めて柳沢十六人衆と名付け、歌舞音曲を仕込んで美しい着物を着せ、大名などをもてなす際に重用しました。日本には、そうした伝統もあったのです。

男色が排斥されるようになったのは、軍国主義の影響が大きいと思います。日中戦争から始まり戦争の時代になると、男性は徴兵され、戦場でどんどん死んでいきました。そこで兵士を補充するために、国は「産めよ、殖やせよ」と号令をかけたわけです。

そういう時代には、同性愛の人は「生産性がない」ということで、国賊扱いされました。非国民と言われたのです。LGBTが差別・排斥される社会というのは、ことほどさように恐ろしい。人の命を何とも思わない、強権的な社会であることの証しと言ってもいいでしょう。