「〈こんな年にしよう〉という意志を持ち、前を向いて自らの力で歩くことが大切です」(撮影=鍋島徳恭)
86歳になった今だからこそわかることがあると言う美輪明宏さん。困難な時、自信を失った時にも前を向いて進むために必要な心構えを聞きました(撮影=鍋島徳恭 構成=篠藤ゆり)

渋沢栄一のような実行力を

毎年、年末になると、いろいろなところで「来年はどんな年になるでしょう」と聞かれます。私のことを、預言者か何かだと思っているのでしょうか。(笑)

でも、「どんな年になりそうか」だなんて受け身で待っているだけでは、何も変わりませんよ。「こんな年にしよう」という意志を持ち、前を向いて自らの力で歩くことが大切です。

2024年に紙幣が新しくなるということで、21年にそのデザインが発表されました。一万円札の肖像画は、渋沢栄一になるようですね。

渋沢栄一といえば、大河ドラマで話題になりました。聞くところによると、あの方は一人で100人分くらいの仕事をなさったそうです。日本初の銀行を創業したり、ガスを引いたり、さまざまな会社の創立にかかわっています。

とにかくものすごい実行力で、「これをやるんだ」「やらねば」という思いで走り続けました。それもこれも、「日本を何とかいい国にしたい」という志があったからでしょう。そんなふうに志を持ち徳が高い方が、たとえば総理大臣などの立場で日本を引っ張っていけば、きっと日本もいい方向に向かっていくでしょうね。

渋沢栄一は大変能力の高い人ですが、特別な能力がなくても、誰にでもできることがあります。皆さんに一番必要なのは、「悩む」より「考える」ことです。「悩む」と「考える」は、似て非なるもの。まったく違います。