左から、常喜眞理さん、荻野アンナさん、大江英樹さん(撮影:木村直軌)
病気も老後の資金も、どうなるかわからないから不安になるもの。では、目に見えない心配事から解放されるにはどうしたらいいのか。慶応義塾大学の教授職からの退官をいよいよ間近に控えた作家の荻野アンナさんが、経済コラムニストの大江英樹さんと医師の常喜眞理さんに聞きました(構成:山田真理 撮影:木村直軌)

投資や寄付でお金を旅に。「欲」と「恐怖」のコントロールがカギ。専門家が教える老後の新常識〈前編〉よりつづく

老後のお金の使い道は

荻野 若い頃と違って、お金のためだけじゃない働き方ができるのは老後のポジティブな面かなと思っているのですが。考え方が甘いでしょうか。(笑)

大江 いいえ、素晴らしい着眼点だと思います。私が最近皆さんにお伝えしているのが、老後の支出と収入を「三分法」でとらえようという考え方です。まず若い頃と違って、年を取るとお金の使い道がシンプルになってきますよね。

荻野 物欲もあまりなくなって。

大江 すると使い道としては、一つには食費や光熱費などの「日常生活費」。これは毎月使う額がだいたい同じで、死ぬまでかかるお金です。二つ目の趣味や旅行、グルメに使う「自己実現費」は、我慢しようと思えばできるお金。三つ目が施設入居費を含む「医療・介護費」で、将来的にいくらかかるか不確実なお金と言えます。

常喜 それぞれに何のお金を充てるかを考えるのですね。

大江 「日常生活費」には、毎月一定額で死ぬまで支給される「年金」を充てます。「医療・介護費」はいくらかかるか不明なので、確実にある金融資産や不動産の売却益といった資産を使うことにします。

荻野 2番目の「自己実現費」は、我慢しすぎると毎日がつまらなくなってしまいそう。(笑)

大江 ですから、その分働いて収入を増やすのです。年金生活になっても月5万円ほどをアルバイトで稼げば、友人と旅行に行ったり家族で美味しいものを食べたり、習い事もできるでしょう。