孤独と孤立はまったく別物

でも、この「孤独」という問題は、それほど悪いものなのでしょうか。

『ちょうどいい孤独‐60代からはソロで生きる』(著:鎌田實/かんき出版)

実は僕は「孤独」と「孤立」はまったく別物で、孤立はよくないが、孤独は決して悪いものではないと考えています。世の中には、「孤独は悪」と決めつけ、「ひとり暮らしです」などと言おうものなら、「あら、かわいそうに」と”同情”してくれる人が多い。

「大きなお世話」です。

ある出版社で僕の連載記事を担当してくれていた有能な編集者Aさんは、まだ継続して働くこともできたのに、定年で職場を去ってしまいました。

彼はシングルです。「ひとりだから無理をしなくていいんだ」と言う彼は、映画も芝居も音楽も詳しい。たくさんの有名作家からも愛された人でした。

この人とご飯を食べていると、たくさんの刺激をもらえる。僕の担当編集が終わった後も、よく一緒に食事をしました。コロナでさぞさびしくなっているのではと、時々心配になって電話をすると、相変わらずハイテンションで元気な声が返ってきます。

この人に限っては、コロナ禍でも人間関係がズタズタになっていないように感じました。コロナに負けず、いまもしたたかにひとり生活を謳歌していました。

世の中には、誰かと一緒にいるのが楽しいと思う人がいるように、ひとりのほうが快適だと感じる人もいます。事実、それをテーマにした書籍も巷にあふれています。

高齢者よりも若者のほうが、この「孤独」に敏感で、いまは都市部のビジネス街で「ひとりランチ率」が急速に増えています。ひとり旅やひとり映画など、ひとりで楽しむ「ソロ活」「ぼっち」が急速に増えているのは、そもそも人間には「ひとりで行動したい」という孤独愛好家が多く、コロナ禍を契機に市民権を得るようになったからだと、僕は思っています。