人間は「ひとりでいたい」欲求を持つ存在

アフリカで誕生した人類は、周囲に住む猛獣たちの標的になりやすい脆弱な存在でした。そこで生き延びるためにコミュニティーをつくったのです。

でも、一緒にいると息が詰まってしまい、やがてコミュニティーから離れたいという欲求を持つ者も出てきました。そして世界へと散らばって行きました。こうした人たちがいたから、人類は”出アフリカ”に成功し、何万年もの時間をかけて「グレートジャーニー」の旅に出かけ、全世界に定住するようになったのです。

つまり人間というものは「群れたい」欲望と「ひとりでいたい」欲求の両方を併せ持つ存在です。ただ、「群れたい」欲望が強すぎると集団の中で埋没してしまうし、「ひとりでいたい」欲求が旺盛だと社会的孤立が深まってしまいかねません。この両方のバランスを上手に取ること、それが現代に適した生き方なのではないかと思います。

人はもともと「群れたい」「ひとりでいたい」欲求の両方を併せ持つ存在(写真提供:写真AC)

実は現代社会は、否応なく「ひとり暮らし」に向かわざるをえない構造になっています。特に都会では核家族化が進み、親子二代の同居などは夢のまた夢。地方でも過疎化が進み、親と子どもたちは、遠く離れて暮らしています。

「遠くの親戚より近くの他人」という言葉がありますが、頼るべきは近くに住む友人ということになります。しかし、よほど気心が知れていないと、友人との人間関係がかえって重荷になったりすることだってあります。