「やぁやぁやぁ、土居まさるです」

そんなアイダ君が教えてくれた「土居まさる」さんとは、当時、ラジオの文化放送の人気アナウンサーで、『ハローパーティー』は18時45分から20時までの帯番組。『セイ!ヤング』は、0時30分から3時までの深夜番組で、土居さんはその中の一曜日を担当していました。

自宅で初めて土居さんの番組を聴いた途端、(こんなに面白い番組があったんだ)と思うのと同時に、(こんなふうに自分が言いたいことを自由に話せたら、面白いことがポンポン言えたなら、どんなにいいだろう)と思った私。

そこからは、土居さんの「やぁやぁやぁ、土居まさるです」という挨拶や、テンポがよく、メリハリがあって、でも、騒がしいだけでなく、リスナーからの“お悩み”に親身になって答える土居さんの語り口をなんとか自分のものにしたいと真似しはじめたのです。

当時、ラジオの深夜番組は日本全国で盛り上がっており、『深夜放送ファン』なる専門誌は、いまで言うアイドル誌のようにグラビアページやインタビューページで構成されていました。

さらに、当時のラジオはテレビよりも情報発信が速く、特に洋楽がかかるのは3か月程、速かったし、テレビには出ないフォークソング歌手がゲストに来たりしていたものです。

つまりラジオをものにすれば、アイダ君のように情報通になれるし、ちょっとオマセなクラスメイトとして羨望の眼差しで見てもらえると理解しました。

何より私は、口下手を直したかったので、これでもか、これでもかと土居まさるさんの口調を真似し、「この曲が流行っている」「この人の人気が出る」といった情報を入手してはクラスで“発表”するようになったのです。