原点はお祭りの盆踊り

――踊りの原点は4~5歳にさかのぼる。地元のお祭りのお囃子が孤独な少年の心を引き付け、いつの間にか踊りの輪の中にいた。そして「気がついたら踊りが好きになっていた」という。

 

僕が生まれたのは、1945年3月10日、東京大空襲の日です。食料も乏しい時代でしたし、かなり未熟児で生まれたようで。小学校に上がってもクラスで一番小さく、身体も弱かったから、いじめられる。だから、まわりの子どもたちを避けるようにしていました。

人と話すのは苦手でしたが、踊りは大好きでしたね。僕が育った八王子の盆踊りや、祭りの神楽のお囃子が聞こえてくると、体がうずうずして。大人の輪に交じって踊るうちに、自然と踊ることが大好きになりました。

その後、母親から「身体が弱いから鍛えたほうがいい」と言われ、スポーツをするようになりました。大学1年まではバスケットボールに真剣に向き合っていたのですが、上には上がいるし、続けたところでモノにはなりそうにない。1年で大学を辞め、心がスポーツから離れるのと同時に、踊りをやってみたいという気持ちが芽生えて――スポーツから芸術への転換を夢見たわけです。

そこから10年ほど、クラシックバレエやモダンダンスを学びましたが、自分の目指す踊りとは違うのではないかと悩み始めまして。そんなときに出会ったのが、「暗黒舞踏」の創始者である土方巽(ひじかたたつみ)の踊りです。前衛的で、それまでの常識では測ることのできない踊りは、ものすごい衝撃でした。