(C)2021「名付けようのない踊り」製作委員会

地面には生と死が混ざっている

農業をして自給自足しながら、踊りに専念する。そんな生き方を求めて移住しようと思い、みんなに相談したら、半分以上の若者は「それだったら自分は去る」と。自国に帰ってしまった外国の若者もいます。でも3分の1くらいの人が一緒に山梨に来て、農業をやるようになりました。一時期は50人くらいいたでしょうか。

僕自身は、子どもの頃、自然の中で育ちました。ところがその後、スポーツに興じたり都心で暮らすようになり、自然と共存する暮らしから切り離されていたわけです。しばらくぶりに自然の中に身をおき、農業を始めて、本当にびっくりしました。

草むしりをすると、虫たちが大慌てで、わ~っと動き回る。「あぁ、これだ!」と思いました。昆虫が死んだり、植物が枯れたり、またそこから新たな命が芽生えたり……。わずかな地面にも、死ぬことと生きることが混ざっている。

光がふっと土にあたり、そこにある葉を動かすと、その下に小さな虫がいる。さらに土の中には、肉眼では見えないバクテリアがいるわけでしょう。そして我々の身体の中、たとえば腸内にも、さまざまな菌が住んでいる。いわば僕たちの肉体は、菌と共存し、成長させる器でもあるわけです。毎日、農作業をするなかで、そんなことを考えるようになりました。