(C)2021「名付けようのない踊り」製作委員会

大酒を飲んで、二日酔いで試写会場に

でも、自分が映像で映っている姿は、見たくなかったなぁ。だから試写会の前日に大酒を飲んでベロベロになり、わざと行けない状態になって。当日になって、もしかして失礼なことをしているのかなと思い……二日酔いで酒臭い息を吐いたまま、試写会場に行きました。(笑)

自分としては、本当に、恐る恐る見た、という感じです。でも見終わったあと、素直に感動したんです。「わぁ、映画というのはすごいなぁ」と。それまで映像にはあまり関心を持っていなかったので、映画もあまり見ていませんでした。でも、莫大な労力をかけて映画を作るという行為そのものに、無条件で尊敬の念を抱きました。

監督は、「泯さん、踊っていたよ」と言ってくださった。確かに映画を見ると、踊りそのものが映っているように見えましたし、その瞬間の自分の感覚が蘇ってくる。それも新しい発見でした。

もちろん、その1作で映像の世界からは遠ざかるつもりでした。ところが、世の中の反応が異常なくらいすごくて(笑)。いろいろなオファーが来たんですけど、当初はほぼ断っていました。そんな時、犬童一心監督から送られてきたのが、『メゾン・ド・ヒミコ』の台本でした。

卑弥呼はゲイバーの元ママで、ゲイのための老人ホームをやっていて、末期がんに侵されている。台本を読んで、「へぇ、この卑弥呼役は面白そうだな」と。ぜひ、やってみたいと思ってしまったんです。そこからですね。役者としての仕事もしていきたいと考えるようになったのは。

いろいろな役者さんと共演すると、踊りとの違いや、共通点など、いろいろな発見があって面白い。これからも、今のように農業をやりながら、踊りと役者、両方を続けていきたいと思っています。ただ、僕は今、76歳ですから。この先、台詞が覚えにくくなる日が来るかもしれません。そうなったら、しがみつく必要はない。潔く身を引こうと思っています。

*田中泯さんが出演する『名付けようのない踊り』は1月28日(金)より ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿バルト9、Bunkamura ル・シネマほか全国ロードショー

配給:ハピネットファントム・スタジオ

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