できないことがどんどん増えていく
室内が30度を超えていても、我慢強さを自任している父は、エアコンをつけない。暑さが体に堪えているのは、傍から見ていても明らかで、家でじっとしていることが多くなった。
秋風が吹き始めた頃には、車を運転する回数も激減した。スポーツクラブに行って入浴するのが習慣だったのに、それもできなくなっている。
家のお風呂は入りたくないと言っている父に対して、私はこれまでと違うアプローチをすることにした。
「パパは健康だから、新陳代謝がいいでしょ。お風呂に入らなかったら、脂ぎった匂いがするかもしれないじゃない。女性に嫌われるよ」
「そうか、まだ男臭いか。じゃあ、風呂に入るかな」
男臭いと言われると、「元気な人」として扱われていると受け取り、父の心をくすぐれると考えたのだが、作戦は見事に成功した。