壇の下まで降りて、笑顔で「ありがとう」と
もう一つ、石原さんの気配りを感じたことがありました。2011年、石原さんが東京都知事選で4期目の当選を果たした時のことです。勉強会などでお世話になっていましたから、開票当日の当選祝いの際、個人的なお祝いのつもりで花束を持っていったのです。
私はその時、たまたま足を怪我してしまい、松葉杖をついていました。松葉杖姿で花束を渡すのもどうかと思い、最初は花束だけを置いて帰ろうと思っていました。しかし、石原事務所の人が「直接渡してやってくれませんか」とおっしゃったので、松葉杖を椅子の下に置き、そろり、そろりと壇上の石原都知事へと向かって歩いて行きました。
すると、その様子を見ていた石原さんは、壇上からでも十分に受け取り可能な距離でしたのに、すっと壇の下まで降りてきてくださり、笑顔で、「ありがとう」と花束を受け取ってくださったのです。そのさりげない気配りにも感動しました。
このように一流の人ほど、細かな部分で気配り、目配りをされているものです。
石原さんはその後、都知事を辞めて衆議院議員になられました。
「衆議院議員になった以上は、ぜひ内閣総理大臣になってほしい」と勝手に考えたりしたものですが、残念ながら、それは実現しませんでした。
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石原さんのご逝去を受け、吉川さんからコメントをいただきました。
石原先生が亡くなられ、驚きとともに落胆しております。
いつまでもお元気でいてくださると思っていました。
まだ信じられません。心よりご冥福をお祈りいたします。
※本稿は、『女ひとり永田町を走り続けて50年~角栄、慎太郎、ゴルバチョフから学んだ智恵』(中央公論新社)の一部を抜粋・再編集したものです。