イラスト:カワムラナツミ
飲酒のコントロールができなくなる「アルコール依存症」。コロナ禍による外出自粛やリモートワークの定着といった生活スタイルの変化が原因で飲酒量が増え、新たにアルコール依存症と診断される人が増加しているという報告もあります。アルコール依存症は本人だけでなく、家族を巻き込んで人間関係や生活を破壊してしまうケースも…。峰村亮子さん(65歳)は長年アルコール依存症の夫に振り回される生活を送っていましたが、ある時ついに包丁を持った夫に追いかけられーー

火事を起こしても我関せず

私は21歳のとき、10歳年上の夫とお見合いをした。仲人に「真面目な人だから」とすすめられ、3回会っただけで結婚。結婚後の夫は、口数は少ないけれど真面目に働き、2人の娘にも恵まれた。私自身も看護師として仕事にやりがいを感じ、このまま平凡な生活が続くと信じていたのである。

そんな生活が変わったのは、夫のアルコール依存がきっかけだ。今考えれば、原因は私にあったのかもしれない。妊娠時につわりがひどかった私は出産恐怖症になり、30代に入ったころからずっと夜の夫婦生活を拒否。

そのストレスのせいか、夫は40代半ばくらいから酒に溺れるようになった。やがて会社に行けない日が多くなり、57歳の時ついにクビになったのである。

無職になってからの夫は、信じられないような行動を繰り返すようになった。一日中何もせず、食事以外はベッドか庭の納屋で寝て過ごす。たまに外出して帰宅すると、靴のまま家に上がり、そこらじゅうが泥だらけに。

風呂に入らず、トイレの後にお尻を拭かないので異臭を放ち、夫が動くたびに鼻をおおいたくなる。挙げ句の果てに、排泄を近所の畦道や墓地でするようになったのである。