美人の湯で、本当に美肌になれる?

「あそこの温泉に入ると肌がスベスベして、美人になったような気がするわ」という話をよく聞く。果たして温泉には、本当に美人効果=美肌効果があるのだろうか?

平成26年7月に医学的知見を踏まえ、環境省から出された温泉法の改正案には、一般的適応症にも泉質別適応症にも「美肌効果」という項目はない。しかし、一種の美肌効果が期待できる温泉はある。一般に美人の湯と呼ばれるものには次の4種類の泉質があるので例を挙げて解説しよう。ちなみに「日本三大美人の湯」と呼ばれる、龍神温泉(和歌山県)、川中温泉(群馬県)、湯の川温泉(島根県)は、いずれも4種類の泉質に該当する。

 

1 炭酸水素塩泉

アルカリ性の炭酸水素塩泉は皮膚の角質層を柔らかくし、表面の古い層を取り除き、皮脂を落とすせっけんと同じような界面活性作用(乳化作用)がある。不要な角質と毛穴の汚れが落ち、入浴後はお肌スベスベの滑らか美人になる。温泉に入った瞬間に肌がヌルヌルする感触があるのが特徴である。

例:美山療養温泉館(日高川町)、龍神温泉(田辺市龍神村)、近露(ちかつゆ)温泉「ひすいの湯」、奥熊野温泉「女神の湯」(ともに田辺市中辺路町)、湯の峰温泉(田辺市本宮町)以上いずれも和歌山県

 

2 硫黄泉

炭酸水素塩泉同様、皮膚の表面を軟化し古い角質を取り除き、余分な皮脂を除去する作用がある。また、角質層にあるメラニン色素(シミやそばかすの原因)の生成を抑制し、継続的に入浴すると皮膚を白くする「美白効果」も期待できる。

例:えびね温泉(白浜町)、湯の峰温泉 以上いずれも和歌山県

 

3 硫酸塩泉

カルシウム―硫酸塩泉(石膏泉)には、皮膚の弾性線維を引き締めて、肌のハリと弾力を保つ働きがあるので、別名「しわのばしの湯」とも呼ばれる。

例:川中温泉(群馬県)

 

4 アルカリ性単純温泉

アルカリ性の温泉に入浴すると肌がヌルヌルする。これは化学反応により皮膚表面の角質を構成するタンパク質のペプチド結合がアルカリでアミノ酸に加水分解されるためで、皮膚表面の古い角質を溶解、除去する。この作用で皮膚の新陳代謝が盛んになり、肌を滑らかにする。皮膚科領域で皮膚のそばかすや色素沈着を治療する際に用いるケミカルピーリングと似たような効果が期待できる。

例:湯の川温泉(島根県)、湯川温泉きよもん湯(和歌山県 那智勝浦町湯川)、夏山(なっさ)温泉もみじや旅館(和歌山県 太地町太地夏山)、椿温泉(和歌山県 白浜町椿)

※本稿は、『秘湯マニアの温泉療法専門医が教える 心と体に効く温泉』(中央新書ラクレ)の一部を再編集したものです。