「生き方・死に方」を教えてくれている

私は母の性格をよく知っているから、「またお酒が飲めるようにがんばろう」とか「みんなを元気づけてね」とか、母の好きそうなことを言葉にして励まします。私ができる親孝行といえば、そのくらい。コロナの影響で帰省もままなりませんから。

母は社交的なので、病院や施設でも、「同じ町の人たちがいるから楽しいよ」と言います。施設にいたらいたで楽しむ術を持っている。いっぽうで「早く自分の家に帰りたい」と本音もこぼす。いまは、ワクチン接種の予約などを自分でするのは大変だろうから、その手続きや接種が終わるまでは施設にいてもらうつもりです。

今後、母がひとり暮らしに戻っても、またすぐに何か起きて入院することになるかもしれません。いずれ施設のほうが快適になる場合もあるでしょう。でもいまは、その繰り返しでもかまわないと思っています。いずれにせよ、永遠は望めないわけですから、母の好きにさせてあげたい。自分の意に染まない暮らしをするよりは、そのほうが幸せだと思うからです。

そのためには、プロにお願いできることはお願いし、人の手も借りて。その上で、万が一ひとりでいるときに自宅で亡くなったとしても、それはそれで母らしい人生だと覚悟を決めています。

両親の姿を通して、「自分の役目に対する責任感」や「やるべきこと」「趣味」を持つのは大事だなと、つくづく感じています。父も会社員を定年退職してから別会社でしばらく働き、その後、自らシルバー人材センターを立ち上げました。これからはいくつになっても働く時代だと思ったのでしょう。結局、70代後半まで働いた。高齢になっても、何かしら仕事をしたほうがいい。それが生きがいになって自身を支えてくれる。私もそれに倣って仕事をしています。

親というのは子を産んでくれて、生き方を教えてくれて、最後は死に方を教えてくれるのだなと、つくづく思います。そしていま、母は「最期に向かってどう生きていくか」を、身をもって私に示してくれているんでしょうね。