「〈自分は守られている〉と思うのは幻想だった。弱い立場にある人たちが守られない社会は自分も守られない社会だということを、今回はすごく思い知らされました」(中島さん)

公的機関が人を救おうとしない

中島 「扶養照会する」と脅すことで申請者を追い払う意味もある?

小林 残念ですがそのように使ってしまっている職員もいます。実際に親族から何らかの援助ができると返答があるのは東京都内ではおそらく0.5%以下。全国平均だと1.45%。もともと経済的な問題や不仲、虐待や暴力など、親族に頼れない事情があって生活保護を申請している方も多いわけですから。

中島 公的機関が人を救おうとしない、申請を受け付けたがらないという面で、生活保護と入管の問題には共通点がありますね。

小林 おっしゃる通りです。生活保護基準を下回る経済状況の世帯が実際に保護を受給している「捕捉率」は、日本では20%程度。フランスや北欧では80~90%台ですから、日本ではどれだけ保護を利用する権利のある人が利用できていないかがわかります。

中島 一方で日本の難民認定率は1%以下。欧米諸国は20~50%ぐらいです。そもそも難民になった方はどこにいようと難民のはずなのに、ある国では難民と認められ、別の国では認められないということ自体おかしいです。

小林 日本の難民認定は先進諸国の中でも異常なハードルの高さですね。難民の方々は命がけで国を出てきて、生きるための選択肢がほとんどなくなっている人たちなのに。

中島 現場に裁量権がありすぎるところも似ています。難民認定とか仮放免を決めるのに、入管の裁量権が大きすぎる。